塗り壁がもつ性能と意匠製

 近年、健康で人間らしい生活が求められるようになり、調湿機能や化学物質の吸着性に優れた性能を発揮する「左官の塗り壁」が見直されつつある。 また、その高い意匠性は店舗や住宅のインテリーとして独自の表現として結実しており、消費者のライフスタイルを彩る内装においても取り入れられるケースが増えつつある。
 なかにも、土壁にはとても古い歴史があります。世界には紀元前から今に残る造作物が残っており、その地方の風土にあわせてその土地の土を使ってきたことから「土の仕事」というものが始まっています。 日本では平安時代ともいわれるが、土の歴史は穴を掘って住んでいた時代より、風や雨を防ぐための土塁などの住居を作ったのが土の歴史である。
 その土の造作物は、目的に応じて城郭建築など鉄砲を防ぐための土塀となり城壁として広まり、その後、京都における千利休の茶室に見られる趣のある土壁として進化し、京都周辺で産出される多彩な色土を使用した京壁などに発展してきた。 故に、茶室などに使われる土は京都の聚楽土などを主に使用しますし、京町家の壁としても京都から産出する土が最適であり、全国で土壁仕事があると京都から材料を送り職人も出かけて行きました。
 壁に使う土は、粘土質が多くなければなりません。しかし、粘土質が強くても割れてしまいます。ですから、スサや藁スサを入れたり砂を入れ粘度質の調整を行います。その粘性を抑えたり、土や砂の配合を考えたり一番塗りやすいバランスで調整できるのが京都の土です。 京都の周辺には清水焼など焼き物の産地が多く、この事からも関西には粘土質の良い土が多いという証明にもなります。京都には、聚楽土のほか稲荷や九条といった土地の名前がついた土が産出し、その色土そのものを部屋の雰囲気や誂えによってそれぞれが使い分けられる。現在では、採出量がままならず錆土を含め加工されることもある。
 土壁を含む左官の塗り壁は、意匠性を含め機能的な仕上げを施す事が出来る。色彩は100色を超え無限大に着色が可能であり、デザインにおいてはあらゆる可能性を持っている。それに何気ない機能性を持つ、唯一の自然素材である。
例えば、土壁や漆喰塗りにも水捏ね、糊捏ねや磨き壁があり、その仕上げにおいても座敷や居間など人の触れない壁では撫で仕上げを施し、廊下や便所など衣類が触れ易いところでは押さえ仕上げを行う。外部では、京都御所や文化財の建築に取り入れられている漆喰のパラリ壁があり、土壁でも錆土の利用や油壁など水に強いものを使用するなど昔から自然に利用されて来た。
 最近、各地の住宅展示場にも外壁が「塗り壁」で施工されているものが多くなってきた。又、塗り壁でなければ売れないケースがあるという事を聞く。特に「品質確保法」や「瑕疵保証法」等の法律が施行され、義務化されることも大きく関係があるようである。外壁には、土は勿論セメントモルタルや既調合材など数多くの仕上げ法があり、デザイン的にも掻き落し、洗い出し、ドイツ壁など多くの施工法がある。 又、柔軟な個性を生かす仕上げ法も自由に選べることが出来るのも塗壁ならではの仕上げである。
 個性的な仕上げを可能とする塗り壁の可塑性と展伸性は、湿式工法ならではの特性でありどの建築工法では出来ないものである。先に述べた紀元前から残る土建築に見られる土コンクリート工法は、現在でも「版築工法」として施工されていて、今や左官の領域を超えデザイン壁として多用されている。同じく自然素材の壁材は、着色だけでなくそれぞれの土が持つ自然色を活かした工法を駆使し、壁だけでなくあらゆる仕上げに用いられデザイン化されている。 これは、最近数多くの建築誌に左官特集として取り上げられている。
 この様な動きは、左官が使用する自然素材の塗材が「環境」・「健康」問題に則し二酸化炭素排出量が極端に少ない事に起因する。珪藻土を代名詞とする塗り壁がもつ機能性、吸放湿性能の調湿性がマイナスイオンを含む住み心地を作り出す。高温多湿の日本の気候風土から生み出した土と木と紙で出来た部屋では加湿器も乾燥器も不要となる。又、調湿性能から結露せずダニ等の発生を防ぐなどの効果に加え、ホルムアルデヒド等の吸着性も他の建材を凌ぐデータが出ている。 更に、左官材料のほとんどの廃棄にもCO2の排出が少ない。又、土にいたってはリサイクルが出来、しかも古土を混ぜる事によって土壁の強度が増す利点もある。
 人々の生活の安全を守ってきた塗壁の優れた性能が数百年の歴史を作ってきたが、現代にも生きる左官の様々な工法を紹介する…